飛行機よりも速く!?

 

 



1.卵と依頼人 

 

 

 



「鳥――」
依頼人は言った。
「鳥を、探して欲しいんです」
まだ若い男だった。克魅とそう変わらない年頃だろう。木田というその依頼人は、どこか思い詰めた表情で椎名を見つめていた。
「鳥というと――もしかして、願いの鳥、ですか」
「そうです。ご存知なら話が早い。俺はその鳥を、・・・・・・殺したいんです」



願いの鳥を手に入れた人間がそれを悪用しないために“鳥”を殺す――
「どう思う?」
「依頼を受けさせるための方便だな。願いの鳥なんていくら殺したってキリがない」
依頼人の去ったハリィハックでは、そんな会話がなされていた。
「気になる、克魅?」
椎名に問われて、ソファに寝そべっていた克魅は体を起こした。
「まあ、少しはな。――ちょっと出てくる」
事務所を出ようとした彼を、それまで黙っていた葵が呼び止めた。
「なあ、その「願いの鳥」って何よ」
「・・・・・・おまえ、知らなかったか?」
「聞いたことはある気するけど」
仕方ねえな、と克魅は再びソファに身を沈める。
「願いの鳥ってのは、正確に言えば生き物じゃない。“力”が具現化した存在だ。存在するのは常に一羽。鳥が主人を見つけたとき世界のどこかに新たな卵が現れ、主人の願いを叶えると鳥は消滅し、卵が孵る」
「へえ・・・・・・」
「鳥を殺しても卵は孵る。いくら殺しても無駄。鳥を知ってりゃそんなことくらい当然知ってる。だからあの依頼は嘘なんだよ。」
「何でも叶うのか?」
「ああ。死んだ人間だって蘇らせることが出来る。ただし、心からの願いに限る。しかも、その願いを鳥が認めなければ叶わない」
「鳥に「叶えてもいい」って思わせなきゃ駄目なのか。結構厳しいな」
「つっても本当に存在してるかどうかさえ怪しいシロモノだけどな」
「なんだ、じゃあ都市伝説レベルの話かよ」
「そんなもんだ。そもそも“力”ですら、持ってない人間には単なる噂の中の存在でしかないからな」
だからこそ都合がいい、と克魅は口元に笑みを浮かべた。



「おい、なんだそれ」
マンションに帰った葵は、同居人の圭斗が抱えているものを見て目を瞠った。
「これねー、灰が公園で見つけたんだ。ね、灰v」
「にゃー」
圭斗の嬉しそうな声に灰が同意する。
それは、不思議な色をした、馬鹿でかい卵だった。ダチョウのそれよりまだでかい。
「どうする気だ、それ。食うのか?」
「違うよ! オレ、空飛ぶんだv」
「・・・・・・は?」
「だって、こんなに大きいタマゴだよ。生まれてくる子はきっと、プテラノドン並みに大きくなるんだ。そしたら背中に乗って、飛ぶのvv」
「・・・・・・おまえってヤツは」
葵は眩暈を覚えた。子供らしくてかわいい夢だ。しかし来年中学生になる男の言うことか。
(どうしよう、サンタとか信じてたら)
かなり色々と常識とか教えたつもりだったのだが。甘かった。
しかし、子供の夢を壊すようなことを、あえて言える葵ではない。
鳥の卵なら人間の体温じゃ孵らないだろう、なんてことも、言わない。
「・・・・・・頑張れよ」
「うん!!」
葵には、無邪気に笑う圭斗の頭を撫でることしか出来なかった。




 

 

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9/4

 

 

 


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