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2.彼と願いの鳥
少年は鳥を見つめていた。鸚鵡ほどの大きさの鳥は彼の前に、羽ばたくことなく浮かんでいる。 “力”の結晶とも言うべきその鳥は、ガラス細工のように向こう側の景色を映している。 鳥が、彼を呼んだ。 生まれたばかりの赤ん坊に呼びかける母親のような、優しい声で。 だから、彼は期待したのだ。 ―― いい願い――心のそこからのきみの願い・・・・・・だけど、叶えることはできない 「・・・・・・! どうして!?」 まだ幼い彼は、涙をこらえながら問う。拒絶されたのは彼のただひとつの願い。物心ついたときからの、想い。 ―― もうすぐ・・・・・・ 鳥は静かに言った。 ―― その願いは叶えられる。・・・・・・いつか、他の願いができたら、また呼んでね。ぼくのご主人様。ぼくはずっと、リュウの中にいるから――・・・・・・ 黒竜は目を醒ました。 彼が率いるブラックドラゴンの拠点は、以前雑居ビルとして利用されていた廃ビルだ。十階建ての九階が黒竜専用のフロアだ。 古ぼけたソファから身を起こし、眠気を払うために頭を振っていると、 「黒竜」 声と共に、部屋のドアが開いた。 「あんたに客だ」 言ったのは、黒竜より年上の男。ブラックドラゴンができたときからいて、何かと黒竜の世話を焼いている。 彼と入れ替わりに入ってきたのは四十代の男。黒竜は小さく舌打ちして、 「願いの鳥を探してんだって? “牙”の総統さんよ」 「さすが情報が早いな、黒竜」 総統と呼ばれた男が笑った。“牙”。ブラックドラゴンやハリィハックより、やや闇に位置する組織だ。“不良集団”であるブラックドラゴンより、ずっと質の悪い存在である。総統はそういう連中を“力”を使って支配している。もっとも、彼の力は「竜」である黒竜のそれには遠く及ばないものだが。 「木田ってヤツがハリィハックに依頼したみたいだぜ。鳥探し。断られたみたいだけどな。あんたのとこの下っ端だろう」 「フ・・・・・・あいつか。牙をやめたいとか言っていたな」 「“鳥”はそのためにあんたが出した条件か」 「その通りだ」 総統は鷹揚に頷いた。 (どうせ口からでまかせだろう) 黒竜は口には出さず毒づいた。この男が「所有物」をそう簡単に手放すはずがないのだ。 「で、わざわざ何の用だ。こんなこ汚えとこまで来て」 黒竜の問いに、総統は嘲笑で応えた。 「知っての通り、私は願いの鳥を探している。その邪魔をするなと言いに来たのだ」 「邪魔だあ?」 「私の部下たちが度々ブラックドラゴンの妨害に遭っている。奴らはきみの命令一つでどうとでもなるだろう?」 「妨害どうのって、あいつらは単にあんたらを気に入らないだけだろう。それに俺はあんたと違ってあいつらを支配してるわけじゃない。勝手にここへ集まってきた連中だ」 黒竜は面白くなさそうに言った。 「あいつらに対するクレームを俺に持ってきたって何の意味もない」 「きみを慕うからこそ集まってくるのだろう。きみは意外と優しいそうじゃないか」 「くだらねえ噂だ。とにかく、俺はもともとあんたの頼みなんか聞く気はねえ。邪魔されたくなけりゃせいぜいあいつらに見つかんねえようにするこったな」 総統は黒竜を睨みつけながら唇を歪ませた。笑ったつもりなのかもしれない。彼はそのまま、何も言わずに部屋を出て行った。 再び一人になった空間で、黒竜は小さくつぶやいた。 「あいつはいくら探したって見つかんねえよ。――今はまだ、な・・・・・・」 き み ノ ゆ め ヲ き か せ テ
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