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6.圭斗と灰
「灰が主人だったんだな」 葵が車の中でつぶやいた。後部座席には、眠っている圭斗と、彼に寄り添う灰。 生まれなかった願いの鳥は、それでも灰の願いを叶え、圭斗を助けた。また新しい卵が、世界のどこかに現れるのだろう。 「・・・・・・う・・・・・・・・・?」 圭斗がゆっくりと目を開けた。灰は彼に飛びついて、うれしそうに言った。 「よかったあ、圭斗。もうどこも痛くない? げんきになった? みてみて、ぼくかわいい?」 「え。え? ・・・・・・・・・・・・・・・・・灰?」 圭斗は少女の首に見覚えのある紐が蝶結びしてあるのを見て首を傾げた。灰色の髪をした、七、八歳の姿の女の子。すぐに愛猫だと気づいたのは、愛か、“力”持ち故か。 「願いの鳥の主人は灰だったんだ」 葵が言った。 「おまえを助けて、そうなった」 「・・・・・・そうだったんだ」 (あの鳥、灰の中に消えていったように見えたんだけど・・・・・・) 葵は心の中でつぶやいた。 灰が圭斗の首筋や肩に頬を擦り付けながら、 「これでぼく、圭斗のおよめさんになれるねvv」 「え」 がちゃ。バタン。 運転席に克魅が乗り込んだ。待たせた詫びのつもりか、助手席の葵に缶ジュースを二本渡す。 「さんきゅ。終わったのか?」 「ああ」 克魅が頷くと、ジュースの一本を圭斗に回し、 「じゃ、帰るか」 「・・・・・・っ葵」 圭斗は、缶を握り締めた。 「どうした?」 「帰るって、その、オレ――」 「ぼくのはー!?」 灰が克魅に抗議した。 「うっせえな。猫の分なんか誰が買うかよ」 「さべつー!!」 「圭斗と半分こでもしてろ」 「圭斗」 葵が言った。 「今日はカレーな。那未にはくれぐれも手伝わせるなよ」 「・・・・・・うん」 圭斗はうつむき、笑いながら缶を開けた。 ++++++ 「あいつは無事だ」 呆然と座り込んでいる木田の前で、彼は言った。 「・・・・・・! 本当、に?」 「ああ。願いの鳥が助けたからな。おまえが気にすることはない」 「わざわざそれを言いに・・・・・・? あのこの仕返しに来たんじゃないのか」 ふん、と彼は鼻を鳴らした。 「違うな。俺は今ハリィハックとしてここにいるわけじゃない」 彼は非常階段の手すりに背を預け、独語のように言った。 「牙は気にいらねえ。総統は特にな。今、うちの連中が牙の奴らを追っ払ってる。人数はこっちの方がいるから問題はないだろう。――ここからでも見えるか」 木田は街を見下ろし、彼を見た。 「あんたは――まさか・・・・・・」 「・・・・・・。もしおまえが望むなら、牙のほうはどうとでもしてやる」 総統への嫌がらせの一環だと、彼は言って笑う。まだ残る幼さが、彼の顔に覗いた。 「歓迎するぜ。――ブラックドラゴンへ」 ++++++ 「灰、お風呂は入ろっ」 夕食後、圭斗が灰を抱っこして言った。 「えー、みずきらぁい」 「なんでさー」 「ばーってくるもん」 「水が?」 「うん。ぼくおぼれちゃうもん」 「大丈夫だよ! 今は大っきいから」 「ほんとう? こわくないの? じゃあはいるv」 風呂場から、きゃーきゃーと声が聞こえてくる。 「圭斗はなに騒いでんだ」 克魅が秋人のゲームの相手をしながら言った。 「いざ入ってみたら恥ずかしかったんだろ。灰相手でも、お年頃だしさ」 「馬鹿じゃねえのか。・・・・・・あ」 笑った途端秋人の操るキャラにK.Oされ、軽くショックを受ける克魅だった。
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