たとえ・・・8

 

  たとえ・・・




 


何が起こったのかわからないまま、圭斗を連れて病院へ戻った。出迎えたのは真っ青な顔をした透夜と、半べそをかいた誠太だった。二人は透に背負われた圭斗を見るとホッと息をついた。
「なんだ・・・・・・透兄と一緒だったのか」
「よかった圭斗〜〜、どこ行ったのかと思ったよ〜・・・・・・あれ!?」
誠太がギョッとしたように声を上げた。
「また"力"なくなってる・・・・・・」


圭斗が一度回復したのは、阿倍から連絡を受けた男が"力"を分け与えたからだと、透夜が言った。
「じゃあ、そいつにもう一回同じことしてもらえば、圭斗は助かるんやな!?」
潤が言うと、誠太が「そうなんだけど」と言葉を濁す。
「・・・・・帰っちゃったんだ、アメリカに」
「もう五時間も経ってる。今頃は飛行機の中だろうな」
それって。那未が透夜の胸倉を掴んだ。
「アメリカって――圭斗の父親のこと!? 何でそいつが圭斗を助けるのよ!」
「何でって・・・・・・いわれても、なあ」
「つまり、海兄ちゃんの考えが正しかったいうことか」
潤が那未の耳元で囁いた。
あの公園で、圭斗が現われる前に話していたことがあった。そして海が言った。
圭斗の父親――山波利雪もまた、何者かに操られている、と。自分たちのように常にというわけではなく、彼が息子と接する、そのときだけ。
何者かは圭斗の“力”が欲しかったのか、それとも圭斗を破滅させようとしているのか。それとも、その両方か。
「・・・・・・とにかく、圭斗を助けることが先決だわ」
那未がベッドに横たえられた、意識のない圭斗の頭をポコンと殴る。
「まったくもう、ここ(病院)でおとなしくしてればとにかく回復したのに。このバカっ」
助けられたことに感謝していないわけではないが、それ以上に腹が立つ。無理してまで人を助けることなどないのだ。


廊下でバタバタと足音がした。かと思うと、ハリィハックの一人、布槌稜也が病室に飛び込んできた。
「那未、克魅捕まえてきたぞ!」
「ホント!?」
数十秒遅れて、小林秋人が男と現われた。
男は二十歳前後で、身長は透よりもさらに高い。190cmはあるだろう。細身で、ヒョロリとした印象を与えられる。黒髪で、目つきが恐ろしく悪い。右手薬指の爪が黒いのは"力"を使っているからだろうか。
克魅は圭斗の前髪をグイと上に揚げた。
「相変わらず助け甲斐のねぇやつだな、このバカ。何回俺の手を煩わせりゃ気が済むんだ」
云いながら、ズボンのポケットから小瓶を取り出す。圭斗の顎を掴んで口を開かせると、瓶の中の薬をそこへ垂ら――そうとして、手を引っ込めた。
「どうしたの?」
那未に「いや」と呟くように応えて、瓶を自分の顔に近づけた。
クンクン。
「・・・・・・よし、まだ腐ってない。はずだけどな
言ったかと思うと、素早く薬を圭斗の口に流し込んだ。
「ちょっとオニイサン!?」
誠太が上げた抗議の声を無視して、用は済んだとばかりに病室を出ようとする。
「あんたね! そういうことしないでっていつも言ってるでしょ!?」
「うっせーな、いつものことだろ」
ニヤリ。凶悪な笑顔を残して、克魅は帰っていった。
「・・・・・・おい那未。大丈夫なのか、あの人」
「知らないわよ! しょうがないでしょ、あんなんだけど他に頼れる相手いなかったんだから!」
透夜の問いに、那未は噛みつくように怒鳴った。






圭斗が目を醒ましたのは翌日のことだった。


「絶対副作用ありそうで怖いんですけど・・・・・・」
「おまえの元仲間なんだろ? 信用してないのか?」
「だって克魅ですよ!? 透さんは知らないでしょうけど、あいつは自分が楽しめるか楽しめないかで行動を決めるやつなんです! 必ず必要のない作用をぶち込むやつなんですよ! 今までは葵が止めてたからよかったけど・・・・・・俺何呑まされました!? ヤですよ、気が付いたらチ○コなくなってたりするの・・・・・・」
「な、泣くなよ。そんなバカなことあるわけないだろ? そんな薬作れるようだったら魔法使いだろ、もう」
「ああもうそれ臭い。やつなもうその域に達してる・・・・・・」


かくして、圭斗が心配していた「副作用」は翌日、本当に現われた。
不幸中の幸い、チ○コは付いたままだったが・・・・・・。



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05.4.6
「たとえ・・・」は終わりです。副作用は次のお話で(笑)。克魅・・・以前にも出てます。気付きました?