トラブル
「あれぇ・・・・・・?」
朝、目を醒ますと圭斗は、「見覚えがあるけど知らない場所」にいた。ベッドから出て、探索する。サイズの合わないパジャマのズボンがずり落ちて邪魔なので、脱ぎ捨てる。上着がスカートのようになってしまったが我慢して。
おもちゃも何もない、誰もいない部屋。そこは薄暗くて、圭斗は不安でたまらなくなる。
「ふぇ・・・・・・」
そのとき、「ピンポーン」と音がした。誰か来た!
パッと顔を輝かせた圭斗は、玄関まで転がるように走った。背伸びをしてなんとか鍵を開ける。ドアを開けると、友人二人が驚いた顔をして立っていた。
「せいた、とおやー」
ぎゅっと二人の足にしがみつく。
「え? あれ? だれ?」
「け、いとの知り合いか? ・・・・・・自分の名前言えるか?」
「はい! やまなみけいとです!」
「えー、けいとくん?」
透夜と手をつないでいた千夏(透夜の妹)が、圭斗の顔を覗き込む。
「けいとくん、ちなつより小さくなっちゃったの? かわいー!」
「ちっちゃくなってないもん。けいとはすっごく大っきくなるの!」
「あー・・・・・・」
「えー・・・・・・」
もしかすると、今までで一番厄介なことが起きたのかもしれない。誠太と透夜は、嫌そうな顔を見合わせた。
圭斗が小さくなってしまった。本人が言うには四歳らしい。三歳の千夏の服を着せて、袖が余っているが。しかし、どうやら元の――十五歳の圭斗の――記憶も、あるにはあるらしかった。ただし、理解はしていないようであった。
頼りになる、なんて微塵も思っているわけではないが、誠太と透夜はとりあえず透の元に向かった。圭斗と千夏の手を、それぞれしっかりと握って。
しかし。案の定、透は何の役にも立たなかった。前回の事件の収拾が未だついておらず、てんやわんやでろくに話もできなかったのだ。圭斗が小さくなってしまったのは理解したが、今はそんな面倒なことには関わりたくない、といわんばかりに、顔を背けられた。
「とおるおにいちゃん・・・・・・」
眼を潤ませて切なげに見上げてくる圭斗とは、決して目を合わせようとせず・・・・・・。圭斗は透に飛び蹴りを喰らわせ、呆気に取られる透夜たちを尻目に警察署を颯爽と出て行った。
「圭斗! おまえ一人でどっか行くな、小さいんだから・・・・・・って泣くなよ!」
追いついた透夜が圭斗の頭を撫でる。誠太が「あ」と手を叩いた。
「嶺姉に連絡しとくべきかな」
「おねえちゃん? おねえちゃんとあそぶー!」
「ちょっと待ってねー。・・・・・・ごめん圭斗、電話出ないや」
「えー?」
「メールしといたから。向こうから連絡来るの待とうね」
「いつまで?」
「え・・・・・・わかんないよ」
「うー・・・・・・」
「歯を剥かないで」
「おなかすいた」
「・・・・・・」
「あさごはんー」
「・・・・・・帰るか」
「そうだね。だれんちに?」
「さっき母さん出かけたな、うちは」
「うちも仕事行っちゃったや」
「ごはんー」
「彩太何か作ってくれないかな」
言った誠太に、圭斗が呟く。
「あやちゃんやだ・・・・・・」
「え、なんで?」
「おこられるもん。けいとせいざできない」
「さすがに怒りはしないと思うけど・・・・・・」
「ああっ!」
「なに!?」
「かいがいない! かいー! かいー!!」
「落ち着けって」
愛猫を探しに走り出そうとする圭斗を、透夜が抱き上げる。
「部屋で待ってれば戻ってくるだろ?」
「かえってくるよ! かいはまいごにならないんだもん」
「そっか。・・・・・・じゃあ、圭斗は?」
「む。ま。とおまわりしてるだけだもん! まいごじゃないよっ!」
「そうだな・・・・・・辿り着けば問題ないよな」
「そうだよ! はやくかえろー。ごはんたべるの!」
透夜の頭をぺしぺし叩いて、圭斗は帰途を促した。
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05.10.31
ちっさくなりました。