トラブル
圭斗の部屋に戻ると、阿倍が待っていた。飛びついた圭斗をひとしきり撫で回した後、この現象について考える。
「やっぱりあの薬・・・・・・だろうな。よし、とりあえずハリィハックに話を聞きに行ってくる。圭斗の面倒を頼む」
素早く去って行った。
「あっ。あの人なら飯作れたんじゃあ・・・・・・」
いってらっしゃ〜い、と送り出した後に透夜が気付く。
「へいきよー。けいと、ほっとけーきつくれるの」
圭斗がお尻をフリフリしながら棚に頭を突っ込み、ホットケーキミックスを取り出す。
「ホットケーキならおれにだって作れるぞ! 圭斗は危ないから、千夏と遊んでろ」
「つくってくれるの? わーい! あのねぇ、はちみついーっぱいかけてね!」
――少し焦げたホットケーキでお腹をいっぱいにした圭斗が指に付いた蜂蜜を舐め取っていると、灰が散歩から帰ってきた。
「ニャー!!」
「む。にゃー!」
「にゃー!」
灰、圭斗、千夏の三匹がそれぞれ頭を低くし、お尻を高く突き出して睨み合う。
「何の遊びだ、あれ」
「猫ごっこ?」
自分たちも、あんなにワケのわからないことをして遊んでいたのだろうか。誠太と透夜は皿を洗いながら、小さい者たちの遊びを眺めていた。
と、
「おにいちゃぁん」
千夏が透夜を見上げた。
「ちなつ、こうえんであそぶことにしたの」
「けいともー」
「ニャー」
灰を腕に抱いた圭斗も千夏に同意する。
「んーじゃあ、行くかぁ」
「阿倍さん待ってなくていいの」
誠太が首を傾げる。透夜はズボンのポケットを叩いて、
「平気だろ、圭斗の携帯持って行けば」
「ああ、そだねー」
「せいたせいた、ぶらんこおしてー!」
「おにいちゃん! はやくおみずくんできて!!」
「ニャーニャーニャー!」
やってきた公園で、幼児たちはそれぞれに遊びだした。一緒に遊んでくれりゃいいのに・・・・・・。思いながらも、誠太も透夜もちゃんと付き合ってやっている。
「もういいよー。けいとじぶんでこぐ!」
「あ、そう? じゃあおれそっちで見て――ぅわあああ!?」
自分でブランコを漕ぎ始めた圭斗が、スポーンと、宙を飛んだ。
「きゃー」
「ぎゃあああああ!!」
呑気な悲鳴を上げる圭斗を、誠太が必死の形相で追う。
ガッ。
ズベッ。
どすっ。
蹴つまづいて転んだ誠太の背に、圭斗が着地を決めた。
「きゃっはっはっはっはっはっはっは」
「・・・・・・・・・」
静まった誠太の傍に透夜がしゃがみこんで声をかける。
「おーい、大丈夫か、誠太」
「・・・・・・ぐすっ」
「泣くなよ、男の子だろ」
「おとこのこー」
「ああもう!」
誠太はガバッと起き上がり、笑いながら誠太の頭を叩いていた圭斗を摘み上げた。
「どうしてちゃんとしっかり掴まってないんだよ! 手を離しちゃう悪い子はブランコ乗るの禁止!!」
「ふえっ・・・・・・きんしぃ〜?」
「禁止!」
「いやぁ〜っ、ぶらんこのるー!」
「だめ! 絶対!!」
「やだー! はなせー!」
圭斗の目から涙が零れた、その瞬間。
「フギャーッ!!」
灰の爪が閃いた。
「いったーーーい!!!」
誠太が悲鳴を上げて圭斗を放り出す。
「うおっ」
透夜が無事に受け止める。
「うわ〜ん、ぶらんこー」
「ほら泣くなああいてててて」
圭斗を慰めようというのか、灰が透夜をよじ登ろうとする。あわてて圭斗を地面に降ろしたところへ、誠太の携帯電話が着信を告げた。
「もしもし・・・・・・ああ、阿倍さん。――え? しばらくってどれくらい――知らないってなんだよ!!」
ピッ
通話終了。
「・・・・・・なんだって?」
プリプリしている透夜に、せいたが恐る恐る尋ねる。
「圭斗、やっぱりあの薬の副作用で、しばらくしたら戻るとよ。体力――“力”が回復したら」
「しばらくってどれくらい?」
「知るか!!」
「あーうん、そっか。圭斗よかったねー、放っといても戻るって――あれ?」
誠太は辺りを見回した。「圭斗、どこ?」
「どこって、おれ電話してたんだからおまえが・・・・・・見てなかったのか?」
「えへ」
「ぐるるるるるるるる・・・・・・」
千夏の腕に捕らわれている灰が誠太を睨んだ。
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05.10.31
今が楽しい。だから戻りたくないんだけど、