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ストーカー





圭斗は気付いてしまった。
その男の存在に。

「「・・・・・・ストーカー?」」
誠太と透夜は、同じタイミングで圭斗の言葉を鸚鵡返しにした。圭斗は至って真面目な顔で頷き、誠太のほうに愛猫を差し出した。
「そう。だから、ちょっと始末してくるまで灰預かっててくんない?」
「いいけど・・・・・・」
「ワンッ」
「じゃ、お願いね、クロタ(平内クロタ ♂ 2歳)」
「・・・・・・おれに言ったんじゃないんだ」
「犬に猫のお守り頼むのおかしくねえ?」
「いいんだよ。クロタ(←元野良)が生まれるとき取り上げたの灰なんだから。兄弟みたいなもんだよ。頼れる弟だもんねー」
「ニャー」
「それがそもそもおかしいだろ・・・・・・」
「普通じゃないよね・・・・・・」
「仲良きことは美しきかな〜・・・・・・ってそれどころじゃないんだって」
圭斗がペシッと自分の膝を叩いた。
「あのヤロウをどうお片づけするかだよ」
「ああそうだっけ――あの、ヤロウ?」
「(男に狙われてやがるよ、コイツ)・・・・・・」
「まったくあのカス、こんなちっちゃい灰をつけ回すなんて、・・・・・・地獄ってどんなものか知ってんのかなあ」
ふふふふふふふ。圭斗が悪霊のように笑う。
「・・・・・・あのさ、圭斗。ストーカーって、灰に?」
誠太の問いに、圭斗は「そうだよ」と返す。透夜は片手で頬杖をついたまま、もう片方の手でクロタの頭を撫でていた。
「(なんだ、灰にかよ。・・・・・・相手も猫なんじゃないか?)」




「ストーカーだ!」
透夜がテーブルを叩いて叫んだ。「千夏があんまりかわいいから目をつけられたんだ!!」
「うんアレ、確かに怪しかったよ。じーっとこっち見てんの!」
誠太も同調する。
誠太と透夜は、千夏とクロタ、灰を連れて近所に公園に遊びに行ったのだ。そこで、気付いた。二十歳ぐらいの若い男が、物陰からじーっとこちらを見ていることに。
「それって、」
圭斗は透夜と誠太の顔を見比べて、透夜に手を伸ばした。その顔をこねくり回し、そのまま押さえながら誠太に向けた。「こういう顔のやつ?」
「はびふんばぼっ(何すんだよ)」
「そうそれ! うわそっくり・・・・・・すごい技だね圭斗!」
「やっぱりそうか・・・・・・」
透夜を解放して腕組みする。
「なんなんだよいきなり!? つーかおれがあんなんと似てるわけないだろ!」
「いやほんと似てたよ。圭斗って変に器用だよね」
「透夜、それちーちゃんのストーカーじゃないよ」
「オマエ人の話聞いてないだろ」
「なんだー、ちーちゃん狙われてたんじゃなかったんだ。良かったね透夜」
「そいつ、灰のストーカーだ」

「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

そいつぁ確かに一大事だ・・・・・・。
誠太と透夜は、圭斗に少し同情した。




誠太と透夜はそっと顔を見合わせた。
こわい・・・・・・。
ストーカーが、ではなく、圭斗が。正確には、圭斗と灰が。
飼い主と飼い猫はオセロ盤を挟んで作戦会議をしていた。
「――というのはどうかなあ」
パタン。圭斗が黒を置く。
「ええー、そんなのあまいよ圭斗。それよりも――のほうがいい」
パタン。人型になっている灰が黒を置く。
「うーん、やっぱり灰も徹底的にやる方がいいんだね。じゃあもっと――してみるのは?」
パタン。
「あっそれいいー! やっぱりやるならてっていてきにえげつなく、だよねーv」
パタン。
盤上は真っ黒になった。
「(あの二人って、いつもあんな会話してんのかな・・・・・・)」
「(あの調子じゃ、おれたちも何言われてるかわかんねえな)」
「(・・・・・・暗殺計画?)」
「(・・・・・・・・・ま、そうだったらとっくに殺られてるはずだしな。そんなことないって信じていい)」
「(ヤだよそんな信じ方)」
「(じゃあ信じなくてもいいんじゃねえか)」
「(そんなの切ないよ! 友だちに命狙われてると思いながら生活するなんて!)」
「他に方法なんてないだろ!?」
「わっ、透夜!」
思わず声を上げた透夜に、圭斗がにっこりと笑いかける。
「そうだよね、透夜も同意してくれるなんて嬉しいなっ」
「え。あ、いや。そうじゃなくて、」
ヤバイ。このままじゃ幼馴染みが犯罪者になってしまう。
「やっぱりゴミは砕いて燃やして灰にして固めて埋めなきゃどうしようもないよね!」
「それって物の喩えだよな! な!?」
「えー? なんのことー?」
「小首を傾げるな! 全然かわいくない! そういう仕草が許されるのは千夏みたいなかわいくてかわいくてかわいい女の子だけだ!」
「どうかわいいか言えないなんて、本当にちーちゃんのことかわいいと思ってんの?」
「おれのせいじゃない作者のせいだ千夏はかわいいに決まってるだろ見ろこの愛らしさを!!!」
「論点ずれてるよ」
パタパタパタ。誠太がオセロをすべてひっくり返して言った。
「ホラ圭斗、もっとこう、平和的な解決法を――」
「そんなものは、ない」
「え、即答? 即答?」
「あきらめろ誠太――あれ?」
透夜はあることに気付いた。
「なあ圭斗。そういえば、」




「ぎゃー! 化け猫だー!!!」
ストーカーの脅威は去った。

「なんだよあいつ! 失礼だなもう!!」
圭斗はプリプリ怒っていた。ストーカーは“力”に馴染みのない一般人。目の前で仔猫が自分の意中の少女に化けたのだ。あの反応は当然だった。
「失礼だろうとなんだろうと、これで解決したんだからいいだろ」
「うっさいおまえ、透夜! こんなにかわいい灰を! 愛らしい俺の灰を!! 化け猫扱いするやつをこの世に生み出すなんて!!! おまえは、おまえはあああっ!!!!!」
「落ち着きなよ圭斗。化け猫扱いなんていつものことじゃん」
「・・・・・・いつものことだと?」
透夜の首を絞めていた圭斗がぐるりと誠太を向く。
「え、いや、ほら、そんな顔してないでさ(怖いから)。だって、本人(本猫?)は気にしてないんだろ? 灰が好きなのも好かれたいのも、圭斗一人だけなんだから。ねっ?」
「・・・・・・・・・。灰〜っv」
「ミャーンvv」
既に仔猫の姿に戻っていた灰を気の済むまで抱きしめて、圭斗はルンルンと帰って行った・・・・・・。
「・・・・・・あんなやつだったっけ、圭斗・・・」
「さあ・・・・・・。なあ、灰のどこに、あんなに溺愛するほどのかわいらしさがあるかわかるか?」
「ないと思うけど。あえていうなら、圭斗に一直線なところじゃない? それにほら、本当は猫なんだし。圭斗、動物好きだから」
「そうだなぁ・・・。動物が無条件にかわいいやつっているもんなあ・・・・・・」



おわり。

モドルトップ
05.10.31
日記より再録。圭斗はアホウです。

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